京都は古都とはいえ、街中はビルばかりになりました。
以前京都を訪れた関東の友達が、ビルが多いのを見て
これじゃウチの町と同じじゃん!
と言ったのを聞いて、がっかりしたのを思い出します。これだけビルが増えたらそりゃそうだよね、と思ったりしたものでしたが…
老舗でも、ビルになってて雰囲気を味わえないところが多いよね。
そやねぇ。老朽化した町家では商いができひんようになったりとか事情はあると思うし、きれいなお店も悪いことはないんやけどねぇ…
でもやっぱり京都に来たからには、街中にある昔からの古い京町家のお店に行ってみたいんだ。
それやったら、昔のままのお店でお商売したはるところが上京区には何軒かあるし紹介しましょ。山中油店さんはどうえ?昔にタイムスリップしたみたいなお店なんえ♪
ということで、今回は、街中の雰囲気ある古い京町家のお店に行きたい方へ、山中油店をご紹介したいと思います。
1.山中油店について
江戸後期の文政年間(1818-1830)に、初代・山中平兵衛さんがここに店を開かれました。約200年の歴史がある油屋さんということですね。
こちらのオフィシャルHPがとても秀逸で、楽しめるコンテンツがたくさんあります。
例えば、「あぶらにまつわる、えとせとら」や「ブログ ふたことみこと」。とっても面白く、山中油店について詳しく知ることができますので是非お読みいただきたいです。油についても詳しくなれますし、油を使った料理も出てきますよ!
2.山中油店の素敵なこと6選
ではここからはとっても雰囲気のある山中油店についてご紹介していきますね。素敵なところがたくさんあるのですが、ここでは絞って「6選」としてお話します。
①ロケーションが素敵♥
山中油店は、まずそのロケーションが素敵なのです♪ここでは大きく3つにわけてご説明しましょう。
1)佐々木酒造のすぐ近くという立地
南東に歩いて5分くらいのところに、佐々木蔵之介さんのご実家、佐々木酒造があります。
本当に目と鼻の先なので、この近辺に来られたら是非両方とも立ち寄っていただきたいです(どちらも日祝はお休みなのでご注意を)。
山中油店の地図はこちらへ。南東をたどっていくと、丸太町通の北に佐々木酒造がありますよ。
2)平安時代には内裏の近くだった!
面している下立売通は、日本歴史地名体系によると平安京の勘解由小路にあたると書かれています。
平安京の地図を重ね合わせてみると(平安京オーバーレイマップをご参照ください)、このあたりは大内裏があった地域でした。
そしてさらに天皇がお住まいだった内裏が本当に隣り合わせにあったのです。
千年前には「光る君へ」にあるような宮中生活がここに繰り広げられていたんですね。
*京都市が作成しているいしぶみデータベースのリンクに詳しく書かれていますので、興味のある方はどうぞ。
山中油店から平安宮の内裏にあった建物跡を巡る散策コースをご紹介しています♪
3)安土桃山時代からお商売の町だった。
また、お店が面している通りを下立売通と言いますが、これは「立ち売り」がされていたこと、あるいは、秀吉の頃に呉服商が布を裁って売る「裁ち売り」が語源だという説(「京雀」より)があります。
どちらにせよお商売が非常に盛んな場所やったん。歴史が地層みたいに重なってて面白いわぁ!
②外観・お店の中が素敵♥
お店の中も外もとても歴史を感じさせるしつらいとなっています。まずは外観から。
1)外観
令和の今、こんなに大きな町家で商いをされているところは非常に少ないです!上京区には比較的残っているとはいえ、少ないことには違いありません。
山中さんにたどり着いて初めてご覧になったお客さんは皆驚かれます。
古くて立派だねぇ!しかもおっきぃ!
そして次、目に入るのは
うわぁ~水車が廻ってる!え~!鯉も泳いでるやん!
京町家の店頭に池があって水車が回り、鯉が泳いでいるところなんてまずないですよ^^
山中油店経営のご家族が書かれた本によるとこのように書かれています。
…父は回るものを作るのが好きなようだ。観覧型商品陳列台二種(省略)、水車二つ、観覧型植物鑑賞機などである。
「杏の木のひとり言」山中恵美子著 p.110
どうやら先代さんの作られたもののようですね♪
写真もOKやけども、下立売通は一方通行(東→西)のわりに車がよく通るさかいに、ようよう気ぃ付けて撮影しとおくれやっしゃ♪
2)お店の中
お店は水車→ショーウインドウ→の左側にありますよ。
ガラス戸を開けて小売コーナーに入っていきます。ガラス戸は自動ドアではないので、手で開けてくださいね。
入って左に、取り扱われている油が並んでいます。
今日はお気に入りの「玉締め胡麻油(写真の棚下段一番左)」を買うたえ。
では、小売コーナーから出て、お店左側(西の部分)を見てみましょう。ホントにいろんな興味深いものがならんでいます。
まず、一番左部分にはレールのようなものがあるのですが、これは何だと思いますか?
昔、油の運搬のため倉庫まで行き来していたトロッコのレールだそうですよ。扉のずっと向こうまで続いているそうです。
レールの右側にはこんなものが。何だか見たことがないようなものが並んでますね!
平たくて大きな鍋↓が置かれているのが目を引きます。昔、油を搾るために原材料の種を炒っていた鍋だそうです。
山中油店では製造はされておらず、これは製造所から譲られたものだそうです。
さてここは、柄杓が置かれていますが…
これは昔の販売方法であった「油の量り売り」を再現したものだそうです。
昔は何でも入れ物を持って行って、お店で入れてもらったんですね。
SDGsにかなっているので、また復活しても良い方法かも♪
そしてこれは…
佐々木酒造でも試飲があったけど、こちらでも「油のテイスティング」ができるんです!
オリーブオイルなどは種類によって味も香りも大きく変わるので、これは有難いですよね!
現在は多くのイタリア産のオリーブオイルは未入荷(7月入荷予定だそうです)ですが、レモンオリーブオイル・オレンジオリーブオイルなどはテイスティング可能なようですよ。
それから目が釘付けになったのがこれ!
趣味で作ったという方が寄贈されたそうです。本当にすっごく緻密できれいでしたよ!(触らないでくださいね♪)
③販売されている油が素敵♥
さて次は、油の種類とお得に買える方法をご紹介しましょう。
1)油の種類が多い!
HPの商品の種類を見ても、販売されている油の種類がものすごく多いのに驚かれるのではないかと思います。
販売されている油の種類は大きく
・食用油
・きれいになる油
・自然塗装用油菜種油
の3種類に分かれています。
このうち、食用油はさらに
菜種油・ごま油・落花生油・コーン油・こめ油・えごま油・あまに油・ラー油・葱の油・大豆油
と、10種類の油に分かれる(分け方は筆者の認識によります)のですが、なたね油はさらに4種類に分かれるなど、油の種類は本当に多く、いろんな用途に合うように作られています。油のお話を聞くだけでもあまりに深く、感動してしまうのでした…
私の家も、ひいおじいさんの頃から油をいただいてます。私はオリーブオイルのZefiroとオレンジオリーブオイル、玉締めゴマ油が大好き♪髪の手入れで椿油も重宝してます^^
2)「お買い得」コーナーはホントにお得!
そうそう、食用油のカテゴリーの「お買い得」は本当にお得です♪数は少ないですが、早く売り切りたい商品が入っているのかなと思います。
ちょっと試してみるなら、こちらのサイトで買ってみてはいかがでしょうか。
④イベントが素敵♥
こちらでは「山中油店マルシェ」というイベントを毎月第三土曜に開いています。
新鮮なお野菜・焼き立てパン・コーヒー・燻製商品・おかき・射的ゲーム・焼き菓子と、もちろん油も販売されていて、油を使ったフライものやハンバーガーがあるときも。
そのなかで一番の売り上げを誇るのが
「京丹後いととめ」さんのぼたもち!
「マツコの知らない世界」でも紹介され、絶品ゆえすぐに売り切れてしまうそうです。こちらでは予約制になっていて、大体1週間くらい前にInstagram(@yamanakaaburaten)で告知があるので要チェックです!
この記事を書いてたら、5月28日のYahoo!ニュースにも取り上げられてましたね!
出店者の中には、「Key Stone」さんというお醤油を使ったスイーツを販売されているお店があります。醬油の老舗「澤井醤油」さんの女将さんが作られたお店で、「冷やしみたらし」など美味しいお菓子が出ているのでこちらもチェックですよ!
京都近辺に住んでいる方・観光で山中油店に来られた方は、マルシェに合わせて来るという選択肢もあるかなと思います。
⑤大事な歴史を語っているところが素敵♥
先に書いたガラスのショーウインドウには、ちょっと変わったものが展示されています。
実はこれは爆弾の破片なのです。
1945年6月26日、西陣のこの近辺にアメリカ軍の爆弾が7発落とされました。
戦時中このことは、京都の人たちが動揺しないように極秘とされたので広まらず、いまだに日本の中でも「京都には空襲はなかった」と思っている方が多いですね。
しかし実際は小規模とはいえ何回か爆撃があり、西陣空襲はその中でも最も大きい被害が出ました。
そのことを記録する碑(磯崎幸典氏建碑)がお店の北東にある辰巳公園にありますが、実際の爆弾の遺物は現在こちらに残るのみとなりました。戦争の記録は超貴重で、京都の空襲を物語る宝物ですから、お店に来られた時は是非ご覧いただきたいです。
私の母の家も空襲で穴が開いたんえ。あと10m西に落ちてたら、私も今ここにいやへんかったかもしれんわ。
⑥平安宮紫宸殿の近くにあるゲストハウスが素敵♥
近くには山中油店が運営している京町家のゲストハウスがあります。
「平安宮内裏の宿」という名前で、もともと山中油店が持っていた7つの町家を改修して作られました。6つは新出水通という通りに面し、1つは山中油店本店の向かいにあります。
新出水通の6軒が建つ場所は平安京内裏の承香殿・弘徽殿があったところで、天皇の女御などお后が住んでいた後宮でした。弘徽殿は源氏物語にも出てくる後宮で、名前を聞くだけでも平安時代の雅を感じてしまいます。
この大変素敵なゲストハウスは一棟貸しなので、大人数で借りればとても割安になりコスパもよさそうです!
3.アクセス
佐々木酒造さんからは歩いて5分くらい。佐々木酒造さんでお酒を買い、次は山中油店さんで美味しい油を買っていただきたいです。
*一度クリックしてから見てください
住所 | 〒602-8176 京都市上京区下立売通智恵光院西入下丸屋町508 |
営業時間 | 8:30~17:00(日祝休み・年末年始とお盆に約1週間の休みあり) |
電話番号 | 075-841-8537 FAX:075-822-4353 |
ウェブサイト | 株式会社 山中油店 |
4.ここからどこへ行く? ~散策のヒント~
佐々木酒造から山中油店までのゴールデンルートに加え、さて次はどこへ行こうかということで、こんな散策はいかがでしょう。
山中油店前にある「平安宮一本御書所跡」「内裏跡」の石碑を出発点として、平安京内裏の跡を巡る散策です。
内裏があった場所で「光る君へ」に関連する場所もあるんですよ!
例えば
*紫宸殿跡 一条天皇が政務を行っているところ
*蔵人所町屋跡 藤原実資の御所での居場所・「源氏物語」の頭中将がいるところ
*飛香舎(藤壺)
弘徽殿 「源氏物語」に出てくるところ
淑景舎(桐壺)
*登華殿 中宮定子・清少納言がいたところ
など本当にお話の中心地ばかりなのです!
またこれらはまとめて書きたいと思っています。
5.まとめ
*山中油店について
山中油店は、江戸後期にここに店を開いて約200年の歴史があります。
オフィシャルサイトも充実していて是非読んでいただきたいです。
*山中油店の素敵なこと6選
①ロケーションが素敵♥
・佐々木酒造のすぐ近くで、徒歩5分くらいの距離です。
・平安時代には内裏のすぐ近くで、「光る君へ」の世界が広がっていました。
・安土桃山時代からお商売の町で、面している下立売通は「立ち売り」「(布を)裁ち売り」がされていた場所でした。
②外観・お店の中が素敵♥
・外観は大きな京町家。水車や鯉が泳ぐ池があります。
・ガラス戸を開けると小売コーナー。小売コーナーの左側には昔のお商売の名残や油のテイスティングができるところも。
③販売されている油が素敵♥
・油の種類が多く、食用油・美容に使う油・建築に使う油など、様々な種類の油が販売されています。油に関する深いお話に感動!
・ショッピングサイトの「お買い得」コーナーはホントにお得です。
④イベントが素敵♥
・毎月第3土曜日に「山中油店マルシェ」が開催されています。
・同じく京町家での商いをされている澤井醤油さんのスイーツや、「京丹後いととめ」さんのぼたもちを買うことができます。新鮮なお野菜やコーヒー豆も販売されていますよ♪
⑤大事な歴史を語っているところが素敵♥
1945年6月の西陣空襲で、近くに落ちた爆弾の破片が展示されています。
⑥平安宮の後宮跡にあるゲストハウスが素敵♥
一条天皇も歩かれたであろう場所に建っている、素晴らしい京町家ゲストハウスがずらり並んでいます。多人数で泊まればコスパ良し!
*ここからどこへ行く? ~散策のヒント~
平安宮の内裏跡がすぐそばにあるので、碑を巡り、「光る君へ」・平安の昔を思い浮かべながら帰途につくのも良いのではないでしょうか。
昔の京都のお商売の姿を見たい方にはピッタリのお店ですよ♪
皆さんのお役に立てれば嬉しいです。まだまだこんな魅力的なお店はあるのでどんどんご紹介していきますね!
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