沢山の観光客が来ている京都。6月30日には「夏越の大祓」が行われ、多くの人が茅の輪くぐりをするために京都の中を移動します。いろいろな市内の神社(寺院で行われることもあります)で同じ日(6月30日)に、そしてほぼ同じ時間帯に行われるので、複数の茅の輪くぐりをしようと走り回っている人をよく見かけます。

行きたい2つの神社の大祓の時間が1時間の差しかなかったりすると、1つ目の神社で「早く終わらないかなぁ」って、ものすごく焦るんだよね!

う~ん、それちょっと考えてみよか。そもそも「茅の輪くぐり」て何のためにするのかな?どんなふうに思てくぐったらええか、とか考える?

え~わかんないよ~ とにかくいっぱいくぐったら良さそうだけど、だめなの?
そこで今回は、茅の輪くぐりを「効果的」にする方法、またここは行っておきたいという、特色ある神社をご紹介したいと思います。

「効果的」ていうのは「時間を無駄にせんと、ちゃんとお願い事ができるようなお詣りの仕方」かな^^
1.夏越の大祓とは?
①夏越の大祓の意味と歴史
6月末日に新年から積み重なってきた身の穢れを落とすため神事が「夏越の大祓」です。その神事の中で行われるのが「茅の輪くぐり」。
詳しいことはいろんなところに書かれていますが、まずは神社本庁のHPよりご紹介します。
この行事は、記紀神話に見られる伊弉諾尊の禊祓を起源とし、宮中においても、古くから大祓がおこなわれてきました。中世以降、各神社で年中行事の一つとして普及し、現在では多くの神社の恒例式となっています。
年に二度おこなわれ、六月の大祓を夏越の祓と呼びます。大祓詞を唱え、人形(人の形に切った白紙)などを用いて、身についた半年間の穢れを祓い、無病息災を祈るため、茅や藁を束ねた茅の輪を神前に立てて、これを三回くぐりながら「水無月の夏越の祓する人は千歳の命のぶというなり」と唱えます。
神社本庁HP~大祓について~
不思議とここには蘇民将来のことが書かれていませんが、八坂神社さんのところでは、スサノオノミコトと蘇民将来の関係から茅の輪が説明されています。
素戔嗚尊が南海を旅された際、2人の兄弟の神様に宿を請います。巨旦将来(こたんしょうらい)は裕福でありましたが宿を貸さず、蘇民将来は貧しいながらも粟で手厚くおもてなしされました。感激された素戔嗚尊は、後年疫病が流行しても「茅の輪」をつけて「蘇民将来の子孫なり」といえば災厄から免れると約束されました。疫病退散の御利益のある神様として信仰されております。
八坂神社公式サイト ~疫神社|お社・ご祭神~ より
茅の輪くぐりは昔から延々と毎年行われてきたように思われがちですが、実のところは明治4年、明治天皇が大祓を400年ぶりに復活させた神事で、翌年には全国の神社で行われるようになりました。
明治には旧暦が新暦になり神事も大きく影響を受けました。本来の日程は旧暦の6月末日なので、新暦なら7月か8月になってしまいます。しかしこれでは毎年日が変わることになり不便だということで、新暦の6月末にあてはめ今の大祓の日となったわけです。

②茅の輪くぐりの順序と作法
茅の輪のくぐり方の作法は、本当のところ神社さんによっていろいろなので、どこに行っても使えるレベルの「茅の輪くぐり」の順序と作法を書いておきましょう。ざっくりですが役に立つと思います。
1)神社には大体6月に入ったころ、あるいは6月後半になると茅で作られた輪が設置されます。設置されていたらくぐってよいと思っていただいたらいいでしょう。
2)輪の前に来たら、そこに大体立札など説明があるのでよく読みましょう。そしてそこにかかれている和歌を見ます。大体は「みな月のなごしのはらえする人はちとせのいのちのぶといふなり」1つですが、複数あるところや全く違う文言であることもあります。
それを唱えながらくぐることになるのですが、覚えられなければ写真を撮って、それを見ながら回ってもよいでしょう。
3)回り方だけはどこも同じです。和歌を唱えながら左回りに1回、右回りに1回、最後に左回りに抜けて終わりです。回る前ごとに一礼するとより丁寧ですね(後ろに人がいる場合は省略したほうが良いかも)。
③人形(ひとがた)

これは「にんぎょう」とは読まず「ひとがた」と言います。
人の形に作られた薄い紙で、息を3回吹きかけるとこれに厄が移るとされています。人形を納め神事で燃やしてもらうことで、厄や穢れが取り除かれるのです。
神社によっては車の形のもあったりしますが、大体人の形のものは茅の輪がある神社には置いてあります。是非人形も使ってしっかり厄を落としてもらいましょう!
④やっぱり水無月は食べたい!
夏越の大祓と言えば、やっぱり水無月ですよね!一通り茅の輪くぐりをしたらお茶もしたくなりますし、厄払いもできるとなれば必須アイテムですね。京菓子店でいただくもよし、テイクアウトでお家でゆっくり食べるも良しです♪
大体どこの水無月でも好きなんですが、一番好きなのは塩芳軒さんの水無月です♪

2.茅の輪くぐりはゆったりと?
①茅の輪くぐりの行い方
くぐる方法は前に書いていますが、ここでは「神事で行う茅の輪くぐり」について説明したいと思います。
神事が始まるまでは個々でくぐっていたら良いのですが、いざ大祓神事が始まるとみな大体神職の後ろに並ぶことになります。そう、みんなでくぐるのです。
1列、多くとも2列に並び茅の輪をくぐっていきます。最後尾がまだ前の周をくぐってなくて、先頭の神職の方が次くぐるときに待っていたりすることもあります。

そやけどこれ、ホンマいかにも神事らしいてええわ~ 厳かに廻ることができて大好き♪
②実際のところ誰が来ている?
来ている方はよほど大きな神社でない限り、毎年ほぼ同じ顔触れの氏子・崇敬者が並んでいることが多いです。氏神様を守ろうという気持ちが大きな地域ほど、毎年一定数の人が集まるということですね。そこに多くの観光客が来れば来るほど人が多くなるということです。
③じっくりくぐる?たくさんくぐる?
茅の輪くぐりをする場合、こうすればいいなということが3点あるのでお話しますね。
1)氏神さん・ご縁のある神社を選ぶ。
茅の輪くぐりをする場合に限らずですが、やはりまずは地縁のある氏神さんにお詣りすることが大事かと思います。京都に住んでおられる方なら間違いなくそれが一番。外の方なら、できれば地元の神社さんでしておられたらそこを先に、それから京都で回っていただけるといいかなぁと。
他にはよく行かれる神社さんや強いお願い事がある、または崇敬されている神社さんがいいですね。
もちろん通りすがりでもよいのですが、そこからご縁をつなぐつもりで行くと、お願い事もより叶うのではないかなぁと個人的には思っています。

神さんはお手々広げて待ってくれたはるさかいに、飛び込んでみてもええかもしれんなぁ^^
2)はしごをするなら時間の余裕のある神社を選ぶ。
これも当たり前と言えば当たり前のことです。30日、いくつか回りたい時は次行く神社さんの開始時間の差は最低2時間は見ておきましょう。
個人個人でする場合でなく神事で茅の輪くぐりをする場合、神職の後ろに一般の人が一列に並びます。すると結構長い列で茅の輪をくぐることになります。それでこれを3回やる(くぐる)わけですから、1時間以上かかることも多いです。

みんなで祝詞(大祓詞)を読むことも多いのん。これはかなり時間を取るえ。
なので、記事の最初のまなぶ君のように、多くの神社に近い時間帯ではしごをすることはかなり難しいと思います。次の神社の神事が迫っているということで、イライラしながらくぐったりすることになりますよね。それって、神様への願いが届くものも届かないような気がしませんか?
折角神社の多い京都に来たのだから、たくさんの神社に行きたいと思われるのはよくわかります。でも夏越の大祓は神事なので、途中でやめて次へはしご、とかいうことは極力避けたいですね。複数社行きたいと思われる場合は、神事の時間が離れた神社を選ぶことをお勧めします。
3)神事にこだわらないなら、早めに行く!
「神事に参加したい」のではなくただ「茅の輪くぐりで厄払いをしたい」のなら、30日より前に小分けに行くのが良いでしょう。
神事の日(30日)は人も多いし並ばないといけないしで時間を取りますが、各自で回るならスケジュールも自分で組めます。1週間くらい前になれば茅の輪設置をする神社が増えてきますので、神社さんのサイトで確認するといいですね(中には7月に入ってからもくぐれる神社もあります)。
最終的に「神事に出たいのか?」「茅の輪くぐりだけしたいのか?」どちらを重視するかを考えて回ってみましょう。
3.大祓の時間帯は?
①開始時間帯別神社名
30日の茅の輪くぐりの神事は各神社により10:00~20:00にわたっていますが、大体は15:00~16:00が多く、夕方にかけて行われます。これは茅の輪くぐりを当日多くの人にくぐってもらうためや、一年の半分ぎりぎりにお祓いをするには当日後半の方が良いからではないかと思っています。
*一部神社のサイトとリンクをしていますが、今後増やしていきますので時々見てくださいね。
時刻 | 神 社 |
---|---|
10:00 | 上賀茂神社(茅の輪くぐり) |
11:00 | 今熊野神社 |
15:00 | 市比賣神社・伏見稲荷大社・八坂神社・藤森神社・貴船神社・今宮神社・野宮神社・護王神社・城南宮(25日から諸神事あり) |
16:00 | 車折神社・北野天満宮・吉田神社・平安神宮・大将軍八神社・平野神社・満足稲荷神社・吉田神社・大原野神社・元祇園 梛神社・松尾大社(28日から諸神事あり) |
17:00 | 下御霊神社・御霊神社・京都ゑびす神社・白峯神宮・岩屋神社 |
17:30 | 建勲神社 |
18:00 | 岡崎神社・西院春日神社 |
20:00 | 上賀茂神社(人形流し) |
間違いのないように心がけていますが、行く前には必ず確認をしてくださいね!
②その他神社別情報
1)変則的・今年(2024年)限りの変更など
梅宮大社 | 茅の輪設置なし(例年) |
御香宮神社 | 7月31日15:00(例年月遅れの旧暦ペースで) |
八坂神社 | 7月31日10:00(疫神社夏越祭で茅の輪くぐり)にもある。 |
地主神社 | 改修で閉鎖中(2022年8月19日より約3年間) |
2)茅の輪守り
後でも書きますが、茅の輪はほとんどの神社では抜いてはいけません(例外:建勲神社は神事後、バラバラにして配られます)。代わりに神社さんで授与される茅の輪をいただくとよいでしょう。
北野天満宮 | 500円(疫病退散の悪疫除札 800円) |
上賀茂神社 | 500円 |
護王神社 | 600円(サイトには「茅の輪」とは書いてありません) |
白峯神宮 | 700円(大 1,000円) |
元祇園 梛神社 | *800円(神職手作り)*1,000円(茅の輪守り) |
今宮神社 | 奉納者におさがりとして神饌と茅の輪守授与 |
*元祇園 梛神社の茅の輪守りは「元祇園詣(7月1日~31日)」の期間中のみとなります。
他にもあると思われますので、今後も継続して調べていく予定です。
4.夏越の大祓、特色ある神社ご紹介
①北野天満宮
北野天満宮は神事用として、6月1日から本殿前に茅の輪が設置されます。


こちらは他の多くの神社で唱えられる和歌だけでなく、1周するごとに違う文言を唱えないといけません。
1周目:みな月のなごしの祓いする人は千歳の命のぶるといふなり
2周目:思ふ事みなつきねとて麻の葉をきりにきりても祓ひつるかな
3周目:蘇民将来。蘇民将来。(繰り返す)
年月が経つうちにいろいろくっついていったのかもしれませんね。しかし3週目は本来の意味に合うものですし、ここは迷わず唱えておくのがいいでしょうね。唱えることでその間は余計な雑念も取り払われるでしょう。
たまにあるのですが、ガイドさんが横にある立札に書いてある以外のことを説明されているのを見かけます。たとえば「左に回るときは左の足から、右に回るときは右足から」とかいうのは間違いです。神社さんに確認しましたので、足は気にせず回ってくださいね。立札のとおりに回ってくださいとおっしゃってましたよ。

また、25日からは楼門のところに設置される大きな茅の輪をくぐることができます(これは通るだけ)。


以前はこの茅の輪の茅を抜いて、自分で茅の輪を作る人が多く神職の方が困っておられました。自分たちで勝手に風習化している人たちがたくさんいました。



ホンマに、「ずんべらぼん」になるまで抜かはったんえ!
しかし、中には

これを茅の輪にして持ってたおかげで病気が治ったんどっせ!おおきにありがとうございます…
とか言って喜んでいる人もいたりして、優しい神社さんはなかなか言い出せなかったようです。
しかしコロナ禍の時に人が触った茅の輪を触らないようにと神社さんが注意書きを出されたところ、それ以降はほぼ抜く人が無くなったそうです。思わぬ怪我の功名でしょうか^^;

上の「神社別情報」のところにも書きましたが、小さな茅の輪の形をしたお守りがあるので、大茅の輪を抜いて茅の輪を作ることはしないようにしましょうね。
あ、もちろん小さな方の茅の輪も抜いたらダメですよ~
②今宮神社
こちらの注目点は2つ♪
1)普通の茅の輪のほかに「小さな茅の輪」がある。
大きさは直径1mくらいでしょうか。宗像神社の前あたり、手水の東側に設置されていますが、人が一人かがんでやっとくぐれるくらいの大きさでなので目立たず気が付かない方もいます。立ってはくぐれないので、多少は汚れてもよいつもりで挑戦してみてください!

これがどうして作られたのか聞いてみたことがあります。
実は、余った茅で作られたのが最初だということでした^^。神社さんのユーモアが感じられる茅の輪ですが、小さいだけに、くぐり抜けられたらご利益も大きそうな気がしますね♪
2)授与品は茅でなく杉の葉!
夏越の大祓の神事では厄の移った人形をお焚き上げします(京都では川に流すより多いです)が、参加者にはその時に使われる杉の葉が無料で授与されます。その葉は茅の輪のお守りのように玄関に飾り付けたりして厄除けとします。
杉の葉が授与されるところを知りませんので、これは非常に珍しいと思います。また、茅の輪守りは奉納をした方の授与品の中にありますよ♪


③八坂神社
八坂神社の場合、他の神社と同じく6月末日に行われているのですが、祇園祭が旧暦に合わせて月遅れで決められているので、その最終日にも疫病退散の大祓が行われるよう7月31日に大祓式が疫神社で行われます。つまり、6月と7月の両月末で茅の輪くぐりができるわけです!
祇園祭が旧暦の6月として月遅れて決められているわけは、新暦通り6月で行うと梅雨の期間に当たってしまうからです。同じく大文字送り火も旧暦、月どおり7月にすると梅雨が終わってないかもしれず行事が行えません。七夕は新暦にしたばっかりに、織姫と牽牛が雨で出会えない確率が高くなってしまいました。京都では旧暦で行う七夕が大きく復活しつつあり、雨に悩まされず出会える行事が戻ってきています。
5.ゆっくりお詣りするには?
①茅の輪設置の日数について
以前から6月に入ったら設置されるところもありましたが、コロナ禍を経て、日数は全体的に長期間化してきており、1日から設置のところも増えてきています。全体としては月末1週間前あたりからが多いかなと思います。
コロナ禍にあった間はもともとお詣りの人数が減っていたので、その分人が分散して密を避けられていました。ところが今はそれが「茅の輪くぐりをする機会が増えた」という利点に変わり、今まで来なかった人が来るようになってかえって人が増えているようですね。もう人を減らす必要はなくそれはそれで良いことなのでしょうが、人の少ない期間に行くことが難しくなってきているようにも思えます。
②やっぱり平日と午前中
ただ、全体として言えるのはやはり「平日・午前中」は少ないということですね。観光客が多い神社は修学旅行生が来るのであまり差はなさそうですが、それでも9時くらいまでなら人はうんと少ないので、ちょっと早起きして来ていただきたいです。
神社はお寺より開放的でしかも朝は早くから開いています。清々しく神聖な空気の中でのお願い事は、神様もよりじっくりと聞いてくださるような気がします。
6.まとめ
・夏越の大祓とは?
茅の輪をくぐり半年の厄や穢れを祓います。立札等よく見て、それぞれの神社で決められている和歌を唱えながら、左→右→左と3回まわります。人形は茅の輪くぐりができる大体の神社に置いてあるので、是非やっていただきたいです。
夏越の大祓には、厄払いもできる水無月を食べましょう♪塩芳軒の水無月はおすすめです!
・茅の輪くぐりはゆったりと?
神事のときはここで茅の輪くぐりをするのではなく、1~2列に並んでくぐります。なのでとても時間がかかってしまいます。
実際のところ来ている人たちは氏子が多いです。そこに崇敬者の人たち、観光客の人たちが加わる分人が多くなっていきます。
たくさんくぐるより、じっくり少数をくぐってお願いした方が良いと思います。氏神さんやご縁のある神社を選び、30日にはしごをするなら、神事の時間が離れているところに行くといいです。神事に参加しないなら、30日より前に小分けに行くといいでしょう。
・大祓の時間帯は?
開始時間帯別の神社名を表にしています。
その他例年にわたって変則的な神社や今年限りの変更などもお伝えしています。
小さな茅の輪をかたどったお守りがある神社を列記しています。また新しい情報は随時更新します。
・夏越の大祓、特色ある神社ご紹介
①北野天満宮は、有数の大きな茅の輪があります。昔は抜く人が多かったですが、コロナ禍以降はほとんどなくなりました。
②今宮神社は、普通の茅の輪のほかに「小さな茅の輪」があります。また、授与品は茅でなく杉の葉となっています。
③八坂神社は6月も7月も両月末日に茅の輪くぐりができます。
・ゆっくりお詣りするには?
茅の輪設置の日数はコロナ禍以降長くなったようです。6月1日からのところもありますが、大体神事のある30日から1週間前くらいに設置され始めます。
空いているのはやはり平日と午前中です。修学旅行生が行く神社でも、9時前ならかなり人は少ないです。早めに行ってゆっくりお願い事されるといいですね。
以上、「効果的」に茅の輪くぐりをする方法でした。皆さんのお役に立てれば嬉しいです!
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