京都好きな皆さんは京都の住所をチェックすることも多いかと思いますが、京都の住所って、「長くて面倒そうだなぁ。」と思いませんか?
京都の住所、碁盤の目になってる中心部あたりの住所ってホント長いよね!住んでる人は面倒臭いって思わないのかな?
確かに面倒やなぁ。書面で手書きをせなあかん時なんか、イライラしながら書いてるさかいに^^
それでも書かないといけないの?不思議だね。省略できないのかな?しかし、あれってどういう表示法になってるのかわかんないし。
通り名を組み合わせてあるのやけど、昔からちゃんとした法則があるのん。わかったら、これがなかなか役に立つのんえ。
面倒そうな住所表示ですが、実はとても合理的で、知ればとても納得できる表示方法なのです。
そこで今回は、京都の碁盤の目地域の住所表示法についてお話したいと思います。
これを知れば、この表示法の
1.ルール
2.歴史
3.使用するメリット
がわかるようになります。
2.は要らないように思われるかもしれませんが、このきまりの奥深さは知っておいて損はないです!
特に「京都に住んでいる方」「住みたい方」「よく来る京都通の方」にとっては有益な情報だと思います。1つずつ丁寧に説明しますので、是非最後まで読んでくださいね!
1.表示法のルール
通り名を使った住所表示法にはきっちりとしたきまりがあります。
ここでは、ルールを3点説明していきますが、まずその前に、どうしてもこれを使わなければいけない理由というのがあるのでお伝えしたいと思います。
それは、
通り名を用いた住所が戸籍に用いられている場合、
公文書では必ずこのままの表記で書かなければならない。
ということです。
もちろん戸籍通りに書く、ということは他の地域でも同じですが、京都において、通り名の住所表示法が戸籍に用いられていることを知らない方も多いのです。しかし、碁盤の目地域に住んでいる人の戸籍というのは、ほぼ通り名を使って住所表示されています。
つまり、お役所で住所を書く時では、町名のみではなく、必ず通り名での表示をしなければいけないということなのです。では、これから表記法に則って「きまり3点」の説明をしていこうと思います!
①縦の通りと横の通りの組み合わせで表現する。
京都の街中で碁盤の目を構成しているのは、南北に走る「縦の通り」と東西に走る「横の通り」です。この縦横を使って住所を表示していきます。
住所は
京都市 〇〇区 [縦の通り名] [横の通り名(通)] [(上る)(下る)(西入)(東入)] △△町 ××番地
という形式になっているので、これに当てはめるとわかりやすいかと思います。
赤字のところが他の地域にはない表示法ですね。場所によって、縦と横の通り名が入れ替わります。そして2番目の通り名は慣用的に「通」が省略されます。
なので理解する大前提として、通り名がどこにあるかわからないとちょっとしんどいですね。でも今はGoogle Mapもありますし、その名前の通りの所在地は前よりわかりやすくなっていると思います。
②面している通りが先に来る。
次に、通り名の順番についてです。これは表示しようとする建物が面している通りが先に来ます。
どういうことかというと、
例えば烏丸通に面していて御池通より北にある場所Aがあるとすると、烏丸通と御池通で場所を表現するわけですが、順番は烏丸通が先になって
「烏丸通御池上る」
=烏丸通に面していて、御池通より北なので「上る」
となります。
決して「御池通烏丸上る」にはなりません。
では、御池通に面していて烏丸通より東にある建物Bはどう表現されるかというと
「御池通烏丸東入」
=御池通に面していて、烏丸通より東なので「東入」
と、御池通が先になります。
こちらも「烏丸通御池東入」とはならないのです。
最近はどちらの通り名が先に来るかがあいまいになってきていますが、この順序については歴史があり、以降の2のところで歴史を紐解いてみたいと思います。
③後に来る通りは「最も近い通り」を採用する。
先に来る通りをその場所に面している通りで表示したら、次はその場所を特定する通りを決めます。
それは、面している通りと垂直に交差していて、その場所に一番近い通りとなります。
*まず面している通りがが縦の場合です。
Aは「御池通」と「丸太町通」に挟まれた烏丸通沿いにあるので、どちらの通りとも2番目の通りの候補となります。
しかしAはどちらかというと御池通に近いので、ここでは「御池通」を使用することになります。
*次は面している通りが横の場合。
Bは「烏丸通」と「車屋町通」に挟まれた御池通沿いにあるので、この2つの通りが2番目の通りの候補となります。
しかしBはどちらかというと烏丸通に近いので、ここでは「烏丸通」を使用することになります。
このようにして、住所に1番目・2番目の通りを並べていきます。
④「上る・下る・西入・東入」について
次は、住所表示で用いている「上る下る西入東入」についても、基準となる書き方があるのでご紹介します。
最初に基本情報として確認しておきたいのは
「上る」→ 北へ行くこと 「下る」→ 南へ行くこと
「西入」→ 西へ行くこと 「東入」→ 東へ行くこと
ということは押さえておきましょう。
しかし、京都市内で見かけるこの表示法は、いろんな書き方がされていることがあります。
例えば
「上る」→「上ル」(「る」がカタカナ)
「西入」→「西入ル」「西入る」(送り仮名が入る・「る」がひらがなやカタカナに)
などです。
そんな細かいこと、どうでもいいんじゃないの?
普段書く時はどれでも通じるのやけどね、
実はここにも、戸籍に書く時の基本的な表示規則があるのです(区役所戸籍係にお勤めされていた方に聞きました)。
1) 面している通りを先に書く。
2)「上がる・下がる」は「上る・下る」として「る」はひらがなにする。
3)「西入る・東入る」は「西入・東入」として「る」や「ル」を入れない。
他にも変則的なルールはありますが、大体これに則っているということでした。お役所の方でもご存じない場合があるということだったので、ここはしっかり守っていただきたいですね。
うちの実家の現住所は「上ル」と「ル」はカタカナやし、「東入ル」も「ル」を入れてるけど、本籍は「上る」「東入」てなってるえ。
⑤巷に広がる間違ったルールはこれ!
ここで、特に注意していただきたい点を説明します。最近この解釈をした記事が増えて来て、間違った説が流布しているんです(泣)
気を付けていただきたいのは以下の点です。
交差点をまず求めて、そこからの東西南北で住所表示を表していると説明されているものがありますが、そこには「面している通りが先」というルールが抜けています。通りの組み合わせが交差点の表示であるとすると、通り名の順番はどうでもよくなります。順番は位置を示す大事な点なので、無視してはいけないのです!
その地点が面してない通りから言われると、ホンマに使いづらいのん。そのわけは後に説明してあるさかいに、しっかり読んでほしいわぁ!
また、北に行くことが「上る」南に行くことが「下る」になるということが、実感としてわかる記事も書いていますので参考にしてくださいね。ちなみに、こちらの記事では「上ル」「下ル」と、普段私が書いているカタカナで書いています。
2.住所表示に秘められた深い歴史
歴史については私は専門家でないので詳しくはわかりませんが、私の知る限り・調べた限りで説明してみますので、理解する参考にしていただけると有難いです。
①いつから使われているのか?
縦横の通りを使う表示法がいつから使われているかは、正直のところはっきりしません。
ただ、京都地名研究会会長で、龍谷大学名誉教授・小寺慶昭先生によると、平安時代には横の通りだけで住所を表していたものが縦の通り名も知られるようになってから、縦横の通り名で住所を表すようになったのだそうです(NHK京都「京いちにち」放送)。
②「面している通りを先に書く」のは中世以降
では、面している通りを先にするという考え方はいつ、そしてどこから来たのでしょうか?
これも前出の小寺先生もおっしゃっていて、「『面している通りを先に言う』という規則性は、中世以降、通りを挟んだ町ができてからである」ということでした(参考サイト前出)。
中世、応仁の乱後、京の町はとても治安が悪くなりました。戦いをする武士のどちらかに付くと敵から攻撃されることから、町の人らはで自分たちで身を守らざるを得なくなったのです。
そこで人々は「通りを挟んで住んでいる者同士」というまとまりやすい形(両側町)で自営集団としての「町」を作ったのでした。よって、彼らにとって、そこに面して住んでいる「〇〇通」の名は結束を表す代名詞となったに違いありません。
その後もずっと両側町が存在し続けている洛中では、面している通りがまず居場所を表すことになるから、この表示法が便利であったことは間違いないでしょう。
そんな歴史を知ると、この住所表示法を簡単に捨てることはできないよね。
小さい頃からずっと使てるし、どっちを先に言うとか自然に覚えたけど、無くなったら寂しいし不便やわ。
3.使用するメリットは?
ではこの住所表示を使うメリットをご説明しましょう。面倒な表記方法ですが、意外とメリットは多いですよ♪
①映像を見るように場所を順番に思い浮かべることができる。
例として先ほどの「烏丸通御池上る」で説明しましょう。
この住所表示に慣れている人の頭の中を再現してみますね。
なぁ~ あや、Aホテルて知ってる?
あ~名前だけは知ってるけど。どのへんにあるのん?
え~っと、烏丸通の…
(注:京都の人間は縦横通りの間に「の」をよく入れます。「烏丸の」と言うことも)
うん、烏丸通の?
(あ、烏丸通に面してるのやな? 横の通りはどのへんかな?…)
御池を…
烏丸通の御池やな?ほんで?
(あ、烏丸通に面してて、御池通から北か南かにいったところなんやな。上る?下る?…)
→【「御池」と言ったとたん、御池通より丸太町通や四条通に近い地点は振り落とされます。】
上がったとこ(=上る)の東側にあるホテル。知らん?
(烏丸通に面してて御池通を北に行った東側なんやな。)…あ、わかった!
と、こんな風に思いうかべやすくなるわけですね♪
②町名が同じでも見分けがつく!
京都市内には大変多くの小さな町内があって、そこには同じ名前の町が複数あるのですが、この通り名入りの住所のおかげでしっかりとロケーションがわかり、区別できるようになります。
たとえば「大黒町」。大黒町はこの例えに大変よく使われる町名です。なぜかというと京都市内に同名の町がたくさんあるからなのです。
Google Mapで検索してみると、なんと上京区2つ・中京区3つ・下京区3つ・東山区2つ・南区と11個もあります!(トップの画像は上京区大黒町の織成館前です。)
特に碁盤の目地域には8つ(上京区2+中京区3+下京区3)ありますから、区別するのが大変ですね。しかし、そこに通り名を入れると位置関係がはっきりし、見間違いや行き間違いもぐんと減るわけです。
行政区 | 通り名で表す住所 | 目印になる場所 |
---|---|---|
上京区 | 猪熊通椹木町上る | |
浄福寺通上立売上る | 織成館 | |
中京区 | 六角通富小路東入 | 宮脇売扇庵 |
河原町通三条下る | ミーナ京都 | |
釜座通夷川下下る | こぬか薬師 | |
下京区 | 仏光寺通麩屋町東入 | |
室町通五条下る | ||
七条通油小路東入 |
通り名住所で言うたら、その通り名がすぐに思い浮かばんでも、なんとなく「違う大黒町やな~」てわかるのとちゃうやろか^^ それに、昔は住所を書く時、通り名だけで町名は書かへんかった。それでもちゃんと手紙は来たえ!
他にも、「薬師町」は上京区・中京区・東山区に計3つ、「三軒町」も上京区と下京区に計2つなど、同名の町は他にもありそうです。
③セキュリティー度がアップする?!
なんのことかと思われるかもしれませんが、この通り名表示法を使用した住所はセキュリティー度がとても高いと思うのです。
この表示法はデメリットとして2つ大きなポイントがあります。それは
・長い
・ルールを知らないと書けない
です。
実はこのデメリットこそがセキュリティーを上げてくれると思うのです。
つまり、この住所は
・長いということで書くのが面倒になるから、悪い目的のターゲットから外される可能性大
・ルールを知らない人が真似をしづらい。
ということが障壁となってくれるのではと思っています。
めんどくさいパスワードを持ってるみたいなもんとちゃう?
私が住む場所でも、このルールが厳密に適用されています。よって、私が住所を書く場合は必ずこれに則った書き方をします。慣れてない人が書くとありえないところの文字が抜けてたりするので、少なくとも私の知り合いが書いたのではないなぁと判断しています。
最近は通り名を省略して町名のみで表示してあるものをよく見ますが、上記のような理由で、やはり長い住所の方が便利で安心かなと思うのです。
4.京都人が頭を抱えている問題点とは?
ちょっとここは京都市民のぼやきを1つ。
ネットショップなどで、自分の住所を郵便番号から検索すると、町名しか出ないことがよくあります。
いやそれって当たり前でしょ?
確かにそうなのですが、あれをされてしまうとホントのところ、京都の住所は書けません。しかし実際は、通り名無しで町名だけ書いても届いてしまうので、通り名表示法を使わない人が増えてきているように思います。
わぁ~通り名書かへんかったら樂~♪今度から通り名書くのやめよ~!
でも、今まで書いてきたように表示法は「きまり」になっているので、お役所などで正式な住所を書く時に
あれ?何て書くのやったかな?わからん~!
とかならないように、通り名の住所を覚えておかないといけないのです!
また、町名の後に通り名を書かせる変則的な形で書かないといけないこともあります(泣)。
別に京都だけ特例にしてとは言いませんが、行政区以下の住所記入欄に町名以外(通り名)も書けたらいいな…と思ってます…
銀行とかで戸籍どおりの住所を書く時は、郵便番号を入れたらずらっと通り名住所の候補がぎょうさん出てくるのやけど、これ、ネットショップでも標準装備にしてもらえへんやろか~? あかん? ^^;
5.通り名の住所で場所が検索できる神サイト「ジオどす」!
この住所表示法は、通り名を知っている人には便利なのですが、知らない人からするとこれをどう利用して良いかわからない、ということもよく聞きます。
そこで、通り名付きの住所からその場所を知ることができるサイトがありますのでご紹介しましょう♪
その名は 「ジオどす」
これは京都リサーチパーク内の「株式会社 ジオどす」という会社が運営していて、まさに京都の住所検索のためのサイトなのです!
Google Mapでは、通り名の表示は相当拡大しないと出てこないので、通り名から場所を探すのはとても大変です。でも、「ジオどす」では通り名住所を入れると一発検索で場所が出てきます。
ほんで、出てきた場所はものすご正確なん!ホンマ使えるサイトやわ~♪
例えば前出の「使用するメリット3-①」のところで説明したように、会社の住所は「下る」を使うことを嫌がるところから、
A. 一つ南の横の通りと「上る」を使っている場合
B.「南入」になっている場合
がありますが、「ジオどす」では A.も B.もかなりな確率で正確に場所を出してくれています。
また、「ジオどす」と「Google Map」で同じ住所を検索した結果の各地点をピンで表してくれるので、その比較も面白いと思います。
通り名を使った住所を見たら、是非一度「ジオどす」のサイトで検索してみてください!
京都市内散策には必須のサイトだと思います!
6.「交差点」を通り名で表す方法は?
一方、京都の地点を示すよく似た表示法として、各通りの交差点を2つの通り名で表す方法があります。
例えば、先ほどの烏丸通と御池通の交差点を「烏丸御池」と呼ぶ方法です。京都以外の方にはこちらのほうがお馴染みかもしれませんね。
これはどちらが先になるかという明らかな法則は無いのですが、ある程度決まった順序と言うものがありますので、そこに沿って私なりの解釈をしたものを別記事にて出す予定です。
京都の人間にはある意味「あたりまえ」と思っている呼ぶ順序も、知らない方からすると不思議に思えるものがありますよね。改めて考えてみると目からウロコ的な発想だったりしますので、楽しみにしていてくださいね。
7.まとめ
・表示法のルール
縦の通りと横の通りの組み合わせで表現します。
面している通りが先に来て、後に来る通りは「最も近い通り」を採用します。
「上る・下る」は「北に行く・南に行く」、「西入・東入」は「西に行く・東に行く」で、この表記が戸籍に使用されています。
・住所表示に秘められた深い歴史
縦と横の通りを使って住所表示するやり方は、平安時代から使われています。
「面している通りを先に書く」のは中世以降に行われるようになりました。
・使用するメリットは?
映像を見るようにその場所を順番に思い浮かべることができます。
町名が同じでも通り名が違うので見分けがつきます。
書くのが難しいことから、セキュリティー度がアップするのでは?!
・京都人が頭を抱えている問題点とは?
ネットショップなどで、郵便番号で住所検索をするとき、当然通り名は出ません。町名のみの住所に慣れてしまうと、行政で住所を書かないといけないときに通り名が出て来ず困ることになります。できれば町名の欄に通り名も書けるようにしてほしいなと密かに思っています…
・通り名の住所で場所が検索できる神サイト「ジオどす」!
「ジオどす」という通り名付きの住所からその場所を知ることができるサイトがあります。
Google Mapよりもさらに正確に場所を教えてくれるので、是非一度使っていただきたいです。
・「交差点」を通り名で表す方法は?
「交差点」の表示法は、住所を通り名で表す方法とはまた違う傾向があります。明確なルールはありませんが、こうではないかという推測はできるので、また別の記事でご紹介したいと思います!
京都の住所理解の助けになれば嬉しいです!
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