昨今やたらと耳にする言葉「南海トラフ地震」。いつ起こるか気が気ではないと思っておられる方も多いでしょう。
特に今は「来月(2025年7月)に、日本に大災害が起こる」などという予言をした本も出ていて、いざという時の準備をする人が増えているといいます。
特に大地震には、よく「前触れ」とされる奇妙な現象があると言われます。もし起こったとしたら、あなたはそれが大地震の前触れだと信じますか?
実は、過去に京都を襲った大地震や、南海トラフ地震で津波被害があった地域の記録に、いくつかの“異変”が記されているのです。現代のような科学観測がなかった時代、人々はどんな前兆を感じていたのでしょうか?
今回これを読めば、「前触れ」と思われている特に印象的な3つの異変がわかるので、是非最後まで読んでいただきたいと思います♪
その前によく知られている「前触れ」のおさらいをしておきましょう。
1.よく知られている「前触れ」、って知ってる?
まず「前触れ」についてですが、大きな地震には突然来るタイプもあるものの、多くはその前に何らかの現象が起こると言います。
そういった「前触れ」の代表的なものをご紹介してみると… こういうの、聞かれたことはありませんか?
・動物の異常行動
・地震雲・地震光
・内陸型の地震が増える
動物の異常行動としては、ペットが怖がって逃げたり隠れたり、魚が浅瀬に集まったりすると危ない、などは良く言われますね。災害予知するなら自分の家で飼っているペットを見ておけばよい、という方もおられます。
また昔から、ナマズが地震を起こしている絵が描かれることも多いですね。動物の第六感は人間よりも鋭いことが根拠となっているようですが、これらに関しては、現在どれも科学的に証明されているわけではありません。
地震雲や地震光が写真に撮られたものを見ると、これで予知できたら便利だなぁとか思いますね。空を見て予知する関連で言えば、「地震発生前に上空の電気を帯びた層=電離層に変化が起こる」という説があり、京大でも研究されているそうです。それと地震雲が関係があれば脈アリか?とも思うのですが、残念ながらそういう説は無いみたいですね。

研究されているものがあれば確率も高いかもしれないけど、僕たちがこれで知ることはできないんだよね。
ただ、3つ目の「内陸型の地震が増える」というのは、ある程度数値として出てきている*注 ので、参考にはなるかと思います。阪神淡路大震災あたりから少しずつ増え、東日本大震災の後には、近畿でも最大震度4以上の地震が6回も起きています。やはり、南海トラフ地震が近づいているのでしょうか…!
注:「京都と周辺地域の地震活動の特性」監修:尾池和夫 1996年11月30日 京都市防災会議

阪神淡路大震災の1年前に、京都でも震度4の地震が起こったん。30何年かぶりやったらしいえ。後で考えたら前触れやったんかなとも思うけど、そのときはそんなこと考えへんわなぁ…
2.ひょっとしたらこれが前触れかも!?
では、京都の大地震の古い記録から、なんらかの前触れを見出すことはできないでしょうか?時代を超えたところに意外な前触れを見つけることができるような気がします。いろいろ私が読んできた中で、ちょっと気になった現象が3つあったのでご紹介しましょう。
*これはあくまで私が選んだ現象です。一般に証明されているものではないことをご了承のうえ、皆さんも「これは前触れなのかな?」と探りつつ読んでいただけると嬉しいです。
①地鳴りがする。
江戸時代に起こった出来事が書かれた「宝暦現来集」には、1830年の文政京都地震で、揺れる直前に地鳴りがしていたという記述があるようです。文政京都地震は京都で断層が引き起こした一番最後(最近)の大地震。これは南海トラフ地震ではありませんでした。
*京都の大地震の歴史についてはこちらへ
磯田道史さん著「天災から日本史を読みなおす」にも、これを引用して書かれています。
土御門家といえば、陰陽師・安倍晴明の子孫。江戸時代も朝廷で天変地異を観測していたが、この土御門家が前兆現象をとらえていた、とする資料がある。
「晴明の社は地震以前に地中がうなっていた由。これを土御門様ではお秘しになられていた由。取沙汰」
磯田道史著「天災から日本史を読みなおす」P.132
「晴明の社」とは京都市上京区にある「晴明神社」です。そこで地鳴りがしていたと。場所が場所だけにちょっと怖いですよねw
また「取沙汰」というのですから、その当時世間では噂になっていたのでしょう。単なる噂にすぎなかったかもしれませんが、なにかしらの変化があった可能性もなきにしもあらず。地鳴りなら他の人も気が付いていたかもしれません。
歴史学者の磯田道史さんが、学生時代から調べていた災害史をまとめたものがこの著作となりました。取り上げられた資料も大変多いのですが、普通に災害に備える本としてとても役に立つ本だと思います。
②もやがかかる
次は丸山俊明さんの著作「京は大火!大地震!」に見る現象です。本作は、昔京都で起こった災害について当時の人が書いた本を現代語訳したものです。
それらのうち1662年寛文近江・若狭地震については、地震の様子や人々の動きを記した「要石」という書物に書かれています。これは京都の近くまで延びている花折断層が動いて起こった地震だということです。
この時、地震当日の朝は小雨まじりの薄曇りでした。
…巳の刻(午前10時ごろ)になったころ、道に撒いた砂がたちのぼったように、ぼんやり見通しがわるくなってきた。
「なんやこれは…雲か、煙か」
「龍が天にのぼるとき、雲まいて雨降らすっちゅうが…」
丸山俊明著「京は大火!大地震!」p.4
あたりにもやがかかったようになった、ということですね。その直後、大地震が起こったとあります。さてこれは前触れだったのでしょうか。地震は下から振動が起こるわけですから、地面から砂が立ちのぼるというのは、関係がありそうな気もしますね!
またこの本には興味深い現象が描かれているので、続きの文もご紹介しましょう。
まさかにそれかといぶかしむうち、鬼門にあたる丑寅の方角から、大音が響いてきた。
ドォーッ、ドォーッ
それを合図にしたように、大地が震えはじめる。
京の町から見て、花折断層は東北、まさに鬼門の方向に走っています。音は、断層が割れる音だったのでしょうか。実態と合っているところがまた恐ろしいですね!
日本の古代から現代までを研究される建築・歴史学者である丸山俊明さんの著作です。本書は普通の研究書とは違い、江戸時代の京都の災害記録がそのまま現代語訳されており、物語のように読みやすいです。本の中には江戸時代の京人がいて、彼らが災害に直面したときの状況や恐怖・悲哀の感情が胸に迫って来ます。今の京都でも、大災害が起こればきっとこれに似た状況になるはずなので防災にも必須です♪現在この本は古本を求めるしかありませんが、図書館で探してでも読んでいただきたい私のイチ推しの本です!!

私もまず図書館で読んで感動したん!そのあと古本を探して買うたえ♪
③井戸が枯れる
3つ目は1854年に安政南海トラフ地震が起こったときのお話で、これも磯田先生前出の著作に掲載されています。
南海トラフ地震の前に井戸が枯れた、という記述があるのです。
高知県土佐清水市中浜はジョン万次郎が生まれた村だが、この村にうまれた池道之助という男が安政南海地震に遭い
「大地震の前には急に井の水へる物なり、へらぬ井戸はにごる物なり。大ゆり(大揺れ)には井を見るべし」
と書いている。
それに加え、「『稲むらの火*注』で有名な浜口梧陵が最初に異変を感じたのも井戸水の減少だ」とも書かれています。
この「南海トラフ地震の前には井戸が枯れる」というのはよく言われるものの1つらしく、この本の中にもいくつかの例がありました。沿岸部では津波対策のためにも、特に常日頃からよく見ておかないといけない箇所かと思われます。
注:1854年安政南海地震のおり、浜口梧陵が村民が津波から避難するときの灯りとして稲むらに火を点けた、という逸話。
3.まとめ
・良く言われる「前触れ」
動物の異常行動・地震雲・地震光・内陸型の地震が増えるという現象があります。
動物の異常行動や地震雲などは科学的な証明がされていませんが、内陸型の地震が増えるというのは参考になる可能性もあります。
・ひょっとしたらこれが前触れかも?
①地鳴りがする・②もやがかかる は、江戸時代の京都であった大地震の前に起こった現象。
③井戸が枯れる は、南海トラフ地震の前によくある現象のようです。日頃から見ておく場所かと思われます。
磯田道史さん・丸山俊明さんの著作の中にも、昔の人の記録が引用されています。
いつ大地震が起こるだろう?とビクビクしてい生きるのは嫌ですが、準備を怠らず注意深く生活することはとてもポジティブな生き方だと思っています。これを読んで、いつか起こる地震を察知しようとする気持ちを持ち続けていただけたら嬉しいです。
*まずは食べ物から揃えてみませんか♪
コメント