年が明けて、京都の寺社は相変わらず人でいっぱいです。一般の人が住む地域にも観光客の人たちが歩いて通って行きます。
そんな中、まなぶ君は今年のお正月、京都の神社に初詣に行って帰り道に面白いものを見つけたようですよ。

道を歩いてたらね、お寺の門に一本ずつペアになって松がくっついてたよ!

あ~あれは関東にはないわなぁ。京都でも減ってきてるし、よう見つけたなと思うえ♪
お正月に京都では、お寺や旧家の門に細い根の付いた松が飾られていますが、ご覧になったことはあるでしょうか?実は、あれが京都の門松(根引松)なんですよ♪


でも、今京都の街並みを見ると、一般の家にはしめ縄などの飾りはあるものの、根引松はほとんど飾られていることはありません。

そやし、京都の人でも知ってる人のほうが少ないと思うわ。
そこで今回は、根引松とはどのようなものか、またその歴史や根引松が販売されているところ、実際の飾り方などをお伝えしたいと思います。
1.根引松とは
①歴史
京都の門松「根引松」は、平安時代の貴族の遊びである「小松引き」がルーツとなっています。新年から初めての「子(ね)の日」に野に出て小さな松を根ごと引き抜いて、玄関に飾ったのが最初らしいです。これは門松の起源とも言えますね。
松の根ごと引くから「根引松」。根の張り具合などで占ったりするとも聞いたことがありますが、ともかく健康・長寿・人生の幸せを祈る習わし事であることは間違いないですね。
最初は貴族だけでしたが、いつからか庶民も行うようになりました。しかしそれがいつ頃広まったのかはさだかではありません。
上杉本洛中洛外図の中には、玄関に飾り付けてあるというより、玄関の前に松が2本植えられているところが描かれているので、根引松ではなさそうです。なので、一般にはそれ以降ということかもしれませんね。
*洛中洛外図中、家の前の松はここでよく見ることができます。左隻(上京隻)の室町幕府花の御所の右側にありますよ→NHK・ものすごい図鑑「上杉本洛中洛外図屏風」
②形状

他の松飾りと他と大きく違うところは「引き抜いた」状態を示すため、根が付いていることです。
引き抜いた感を出すために、土はついたままになっています。よって、根が無いものは根引松ではありません。

(玄関を見て)なんやこの松は!枯れとるやないか!

…とか、京都のおっちゃんでも言う人があるのんえ。それほど廃れてしもてる、てことやなぁ。
大きさは大小いろいろありますが、約40~60㎝くらいの飾りやすい小さめがおすすめです。
あまり大きくて長いと、飾った時に傾きやすく、重いから落ちてしまうことがあります。
2.どんなところに飾られているか?
飾られているところとしては、お寺や町家・古い旅館などが多いです。一般のお家ではとても少ないです。
他に目立ったところとしては、茶道表千家裏千家のお家元の家には飾られていますね。私が見た限りでは神社にはありませんでした。お寺も大きなところには、一般の大きな門松が置かれているところが多いです。
あくまで「私の考え」ですが、根引松は一般の門松に比べ質素なので、大きなお寺には似合わないと思っている方がおられるのかもしれないし、大きなお寺のお坊さんは京都以外の方が多いので、京都の松飾りにこだわる方がいないのかもしれない、とも思います。
3.販売されているところ
①スーパーにはない。
スーパーには京都でもまず販売されていません。チェーン店のスーパーではそもそも知っている人はないでしょうし、それほど売れないものを置かないと思います。
②老舗の花屋さんならある!
ではどこで買えばよいのかと言うと、昔からやっている個人商店の花屋さんです。古い慣習もご存じですし、住んでいる人も「ここに来れば買える」ということを良く知っているから商売になるんですよね。
あとはお寺が多い地域の花屋さん。需要があるから置いてあります。


お正月の1週間くらい前には出回ってきます。水気も要らないので早めに買ってもずっと持ちますよ。
4.根引松の飾り方
こちらでは、実際の飾り方をご紹介しましょう♪
①用意するもの
根引松1対・半紙1枚・水引・松に括り付ける紐・松をひっかけるフックのようなもの

水引は荒物屋(雑貨屋)さんか文房具屋さんで買えます。できれば赤金が良いのですが、古い荒物屋さんでしか販売してないので、無ければ赤白でも大丈夫です。
赤金の水引の金の部分は5本全部が1つにまとめられた形となっています。金の部分が剥げていることがありますが、そのあたり、あまり気にしないで使ってくださいねw

昔からの商店街の荒物屋さんにはあるわ。北野商店街・出町桝形商店街にはあるらしいえ。
赤金は京都では寺社用か門松(根引松)に使われます。関東のサイトで見かけたのは、赤金を結婚のお祝いで使うように書かれていたものがありました。しかし京都では結婚のお祝いには金銀を使い、赤金を使うことはありません。
②飾り方
準備ができたら早速飾りますよ♪
大体いつも12月30日に鏡餅などと同じタイミングで、一連の飾り物をセットしていきます。
1)半紙を3~5㎝×6~8㎝くらいに切ったものを、2枚用意します。
2)松の葉と根の間の幹に半紙を巻き付け、糊やテープで留めておきます。
3)根引松用の「赤金」という特殊な水引で半紙の中ほどをくくり、真結び(二重結び)にし、3㎝くらいの長さで結び切りにします。本来京都の結び方は淡路結びですが、一般では難しいので結び切りが良いかと思います。
結び切りができない場合は蝶結びでも良いです(本来は蝶結びは関東の結び方ですが)。水引は色の濃い方が向かって右となるので、赤金も赤白も赤が右です。


水引の金の部分は1本の紐みたいになってるし、結び切りするのも難しいのん!
4)壁に掛ける用の紐を松の幹のどこかに括り付け、輪にしておきます。あまり下だとひっくり返ることがあるので注意しましょう。
5)玄関の扉(門)の両側にひっかけるところを作り、松に付けた紐をひっかけます。お寺などは門に釘で打ち付けてあるところもありますが、普通のお家ではできないので、フックなどで工夫します。雄株は向かって右、雌株は左と言いますが、見たところ区別がつかないのでどちらでもOKです!

我が家は主人が頑張って、コンクリートに穴開けてひっかける用のネジ釘入れてくれました~
6)小正月(15日)まで飾っておき、他のお飾りとともに前日ぐらいに神社に持って行って、15日にお焚き上げ(どんど・とんど焼き・左義長)してもらうこともできます。できない場合は自分で処分しても良いかと思います。
*神社のどんど焼きの場合は、お飾りを神社の古いお札を納めるところに入れるのが一般的ですが、神社さんでもやってないところもあり、初めて行くところには調べて行ったほうが良いでしょう。
5.まとめ
今回は、京都でお正月にお寺や旧家の門に飾られている根引松=細い根の付いた松とはどのようなものか、また歴史・販売されているところ・実際の飾り方などをお伝えしました。
・根引松とは
①歴史
京都の門松「根引松」は、平安時代の貴族の遊びである「小松引き」がルーツです。
新年から初めての「子(ね)の日」に野に出て小さな松を根ごと引き抜いて飾り、健康・長寿・人生の幸せを祈る習わし事。いつしか庶民も行うようになりました。
②形状
他の松飾りと他と大きく違うところは「引き抜いた」状態を示すため、土がついたままの根が付いていることです。京都の人でもこれを見て、「枯れた松」と思う人がいます。
大きさは、掛けて落ちたり傾いたりしない約40~60㎝くらい、軽めがよいです。
・どんなところに飾られているか?
お寺や町家・古い旅館などが多く、茶道表千家裏千家のお家元の家や京菓子店にも見られます。私が見た限り、神社はありませんでした。
・販売されているところ
スーパーにはなく、古い慣習もよくご存じの老舗の花屋さん(個人商店)にはあります。
お正月の1週間くらい前には出回ってきますが、だいぶ前から買っても枯れないと思います。
・根引松の飾り方
①用意するもの
根引松1対・半紙1枚・水引(◎赤金〇赤白)・松に括り付ける紐・松をひっかけるフックのようなもの
*赤金の水引:根引松用の特殊な水引。北野商店街・出町桝形商店街にあり。主に寺社の行事・一般のお正月に用いる。
②飾り方
1)半紙を3~5㎝×6~8㎝くらいに切ったものを、2枚用意します。
2)松の葉と根の間の幹に半紙を巻き付け、糊やテープで留めます。
3)水引で半紙の中ほどを真結び(二重結び)にし、3㎝で結び切り。色は右が赤(濃い方)。
4)松の幹(半分のやや上部)に紐を括り付け、先を輪にします。
5)玄関の扉(門)の両側にひっかけるところを作り、松に付けた紐を掛けます。
雄株は向かって右、雌株は左と言いますが、どちらでもOKです。
6)15日に神社であるお焚き上げ(どんど焼き)に持って行きます。無理なら自分で処分も可。
15日まで飾られているので、お正月に京都に来られる方は、町のお寺さんの門に注目してくださいね♪
京都に住む方は是非来年から「京都だけの門松=根引松」を飾ってみてください。花屋さんを応援することになり、この文化を守ることができるかもしれないと思っています。
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